作者インタビュー
——今回の七福神モデルの企画を依頼されたときの心境を教えてください。
このお話を受けたのは1年以上前でしたが、私にとって今までに無い大きなチャレンジになると覚悟しました。それと同時に、これが形になったときには、画家としても成長できるということ、さらにG-SHOCKがサポートしているスケートボードなどの文化に対しても、新しい風を起こすことが出来ると思い、すごくワクワクしていた部分が大きいですね。
——普段の生活で七福神という存在は意識されていましたか?
日本で生活していると、やはりお正月などに七福神巡りなどの風習がありますので、神社を廻ってご利益を得るということなどで意識はあります。恵比寿様以外の神様はインドや中国由来であったりしますが、それを自分たちの生活の中で良い風に捉えてプラスに変えていくという、そういうエネルギーの持って行き方が、昔から続く日本の庶民の資質であり日本人特有の部分でもあると思いました。今回のプロジェクトに関しても、そのあたりは意識してデザインに落とし込んでいます。
——七福神を表現するにあたってどのような事を注意しましたか?
信仰の対象となっている神様を描いたりデザインに落とし込むという作業は、ものすごくハードルの高いことだと思いましたので、改めて深く掘り下げて勉強し直しました。そして、今の若い人たちが興味を持ち、さらに七福神について詳しく知りたいと思ってもらえれば良いなという想いを込めています。そうなるためには、どういう形で表現すればよいだろうかと考え、その上で、私は表現する側なので、自分なりにいろいろと調べたり、神社などに行って感じてみたりして、自分の中に七福神というものを取り入れて制作しました。
——歴史的には、神様という存在は世の中が悪いときほど頼りにされ、人気が出ると言われています。現代において神様はどういう存在だと思いますか?
これは個人的な意見ですが、宗教や信仰というものは、基本的には人の苦難を救う為に、その対象として居てくださるというか、生きている人間がそれを求めているからこそ、そういう形として対象になっている部分もあると思います。現代においても、自分の人生をどういう風に作り上げていくか、軸をどこに持って立ち向かっていくのか、そういう部分において、こういう信仰や七福神の性質、ご利益というものは参考になると思います。
——長年に渡って受け継がれてきた風習や、先人の知恵というものが凝縮しているのかもしれません。
日本での七福神の捉え方というのは、それぞれの神様の由来となっている国での性質と違うところが多分にあります。それは日本で信仰の対象となった時点で、人々が求めている部分が少しずつ含まれながら変化を遂げてきたのだと思います。もともとの御姿と、日本で七福神として書かれる御姿は大分かけ離れていたりと、独自の進化を遂げているところがたくさんあると思いますね。
——今回の作品は具体的にどのように表現をしましたか?
まず一つ気をつけたことは、神様自体を時計には描かないということです。しかし時計のデザインから、その神様を感じる雰囲気にするということに注意を払いました。そしてパッケージに描かれている絵のほうに、七福神それぞれの神様とともに G-SHOCKがサポートしているアクションスポーツやDJ、ダンスなど7つの文化的な要素を取り入れました。そこに子どもたちに登場してもらい、「子どもが楽しんでいる姿を微笑ましく見ている神様」という構図を、日本画の錦絵のような手法で、すべてのモデルに統一して表現しました。
野坂 稔和 /
Toshikazu Nozaka
東京都出身。幼少の頃からプラモデル製作、オブジェ制作、絵画、スケートボードに夢中になり10代、20代をプロスケートボーダーとして過ごす。現在は画家、スケートボーダーとして国内、海外で活動し、毎年個展、グループ展等で作品を発表する傍ら様々な分野にアートワークを提供している。作品の制作における根底には江戸末期から明治にかけて活躍した日本の絵師への尊敬と憧れがあり、そこから現代に何を生み出せるのかを日々の目標にしている。