Skip to content

GWF-A1000 - 開発ストーリー - デザイン・外装設計編 | G-SHOCK 腕時計

GWF-A1000 開発ストーリー デザイン・外装設計編

性能を満たすためだけではない。
ダイバーズウオッチに、
FROGMANらしさという視点を。

ダイバーズウオッチであること。G-SHOCKであること。そしてFROGMANであること。それぞれ異なる要件を満たしながら、プロダクトの完成度を極限まで高める。デザイナーとエンジニアのせめぎ合いが生み出したのは、今までにない唯一無二のタフネスデザインでした。FROGMAN初のフルアナログモデルとして誕生したGWF-A1000。そのディテールに込められたこだわりを、デザイン×外装設計の想いからひもときます。

商品企画担当 チーフ・エンジニア 牛山和人 開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部

デザイン担当 橋本威一郎(右)
開発本部 デザイン開発統轄部 第一デザイン部
外装設計担当 平山千(左)
開発本部 機構開発統轄部 第一機構開発部

─ GWF-A1000のデザイン開発は、どのように進められたのでしょうか。

橋本:GWF-A1000は、FROGMAN初のアナログモデルということで、われわれにとって新たなチャレンジとなります。しかし、今までとまったく違うものに、FROGMANという名前だけをつけるわけにはいきません。

たとえば、ケースデザイン。FROGMANといえば、正面から見たときにバンドとケースがオフセットになった、アシンメトリーのシルエットが特長です。ケースそのものも、ボタンやフロントビスの配置など、左右非対称になるようデザインされています。これらのアイコン的な要素を残しながら、今までにない新しさを出すためにどうすればよいか。

イメージしたのは、潜水艦のような完全に気密がとれた構造体です。そこから、ハッチや舷窓のようなモチーフを取り入れるというアイデアが生まれました。ポイントは、メタルベゼルを覆うのではなく、見せるデザインにしたこと。そのうえで、部分的にツメ状の樹脂パーツでガードする。3つあるツメの形状やサイズ感、さらにはフロントビスの配置で、アシンメトリー感を際立たせています。

大きく張り出したりゅうずも、デザイン要素としては大きいですね。これがあるだけでアナログの存在感が増します。さらに、左と右で異なるボタン形状を採用することで、左右非対称に仕上げました。

作業は、デザインスケッチでイメージを掴んだり、3Dプリンターでモックアップを作成し、腕に着けたときのボリューム感を確認したりしながら進めます。はっきりとした最終目標があるというより、いろいろな目線で着地点を探っていく感覚ですね。その中で新たな発見もあります。完成するまでにはかなりの紆余曲折がありましたが、そのつど他部署と連携しながら、ディテールをひとつひとつ詰めていきました。なかでも、一番多くやりとりをしたのが、外装設計ですね。

デザイナーの橋本氏は、MASTER OF Gシリーズの担当実績も多数。

デザイナーの橋本氏は、MASTER OF Gシリーズの担当実績も多数。

デザインスケッチ。初期段階からメタルパーツの見せ方にデザイナーのこだわりが感じられる。

デザインスケッチ。初期段階からメタルパーツの見せ方にデザイナーのこだわりが感じられる。

デザインスケッチ。初期段階からメタルパーツの見せ方にデザイナーのこだわりが感じられる。

モックアップ。初期段階(左)では、モジュール企画からの要望でボタンの数が少ない。

エンジニアの平山氏。橋本氏とタッグを組むことも多いという。

エンジニアの平山氏。橋本氏とタッグを組むことも多いという。

─ 外装設計のプロセスでは、どのような苦労がありましたか。

平山:デザイナーが見える部分のイメージを膨らませるのに対し、外装設計はエンジニアの立場で、構造からパーツに到るまで、実現可能なカタチに落とし込んでいきます。

とくに、今回のGWF-A1000は、ダイバーズウオッチとしての制約が多く、さまざまな基準を満たす必要がありました。品質以外にも、量産できるか、コストに見合うかなど、解決すべき課題をひとつひとつ検証し、デザイナーと認識を共有しながら開発を進めました。

目指すべきゴールは同じですが、それぞれアプローチが違う。お互いギリギリのところでアイデアを出し合い、解決策を見出していくというイメージですね。

たとえば、先ほど話のあったベゼルまわりのデザインも、外装設計の目から見ると単純ではありません。金属のベゼルに樹脂のパーツを乗せるだけでは、境目に力が加わったときにめくれてしまうため、樹脂パーツを金属パーツの内側に潜り込ませる仕組みが必要になります。しかも、パーツの形状を変更すれば解決というわけでもなく、実際に組み立て可能かどうかまで検証しなければならない。このあたりが外装設計の泣き所でもあり、腕の見せ所でもあるわけです。

バンドも、当初はケースと直結するデザインでした。しかし、これでは腕に着けたときに付け根部分がたわみ、フィット感が損なわれてしまう。しかも、今回はフッ素エラストマーという新素材が使われており、今までの素材とはたわみ方が違う。こうした設計上の懸念を払拭するため、デザイナーにはケースとバンドの接続部分の形状変更を相談しました。そのうえで、ケースとバンドをピンで接続するなど、連結方法にも工夫を施しています。結果的には、ケースとの一体感を保ちながら、たわんだときの違和感が少ない外観に仕上がったと思います。

G-SHOCKらしい凹凸感のあるベゼルまわりの造形。デザイナーとエンジニアのこだわりの結晶。

G-SHOCKらしい凹凸感のあるベゼルまわりの造形。デザイナーとエンジニアのこだわりの結晶。

フッ素エラストマーバンドの採用はG-SHOCK初。長さも一般ユーザー向けに1ピッチ分短くした。

フッ素エラストマーバンドの採用はG-SHOCK初。長さも一般ユーザー向けに1ピッチ分短くした。

─ アナログモデルならではのこだわりはありますか。

橋本:今までのFROGMANは、デジタルウオッチとして進化を続けてきました。今回、初めてアナログ化するにあたり、FROGMANなりの文字板表現をいろいろ模索しました。インダイアルの配置やインデックスの形状など、さまざまな試行錯誤を繰り返したなか、とくにこだわったのは針のデザインですね。

GWF-A1000は、針の動きだけで潜水時間を表示するため、時針・分針・秒針の動きがさまざまに変化します。そのため、各針が区別しやすいよう、それぞれを異なる形状にしました。加えて、時針と分針は重なったときのシルエットまで、しっかりと一本の針に見えるよう考慮してデザイン。秒針には蓄光を埋め込み、光の届かない海中でもどこを指しているかわかるよう配慮しました。

苦労したのは、形状と重量バランスの兼ね合い。G-SHOCKの耐衝撃性を確保するため、針はできるだけ軽くつくる必要があります。厚みを極限まで削って、面積を広げる一方、針の先端形状や蓄光材の量の微妙な変化で、バランスモーメントが変わってしまうため、シミュレーションを何度も繰り返しました。

もうひとつ、FROGMANファンにはおなじみのカエルのキャラクターも新しくなりました。手にアナログ針を抱え、目でフロントビスを表現しています。目の角度を変えるだけで、悲しんだり怒ったりと表情が変わってしまうため、絶妙なバランスを見つけるのに苦労しました。遊び心のあるデザインとして、愛着を持っていただけたらうれしいですね。

FROGMANらしさを表現した文字板デザイン。検討段階では縦型配置のインダイアル、丸型のインデックスも存在。

FROGMANらしさを表現した文字板デザイン。検討段階では縦型配置のインダイアル、丸型のインデックスも存在。

橋本氏の手で描き起こしたキャラクターを、モノコックケースのバックに刻印。

橋本氏の手で描き起こしたキャラクターを、モノコックケースのバックに刻印。

─ 素材・構造などの面で、新しく採用された技術はありますか。

平山:ダイバーズウオッチに求められる強度・防水性を実現する新たな手法として、センターケースの構造・素材を一新。カーボン強化樹脂を使用したモノコックケースをFROGMANで初めて採用しました。

裏蓋一体型のカーボンケースと、風防ガラスを封入した金属リングを、6本のビスで連結し気密を確保。この気密構造をアウターベゼルの下層に配置することで、外部衝撃による破損・変形を防ぎ、高い気密性を維持するつくりになっています。完成した状態ではこの構造は見えませんが、潜水艦のハッチのイメージはこちらの方が近いかもしれませんね。

カーボンモノコックケースは、GRAVITYMASTERで先行事例のある素材・構造ですが、強さと軽さを併せ持ち、吸水率のきわめて低いカーボン強化樹脂は、高い気密性が求められるFROGMANに最適の素材。メタルケースとスクリューバックでしか実現できないと思われていた防水構造を、樹脂素材で実現できたのは大きなブレークスルーだったと思います。

ちなみに、通常のG-SHOCKでは、気密をとるためのビスは4本ですが、GWF-A1000では6本に増加。均等に配置することで、2本がダメになっても気密性が確保できるようになっています。また、各ボタンに装着するガスケットも、従来の2連から3連に変更。新たに耐薬品性に優れたフッ素ラバーのOリングを追加し、信頼性を向上させました。ダイバーの命を預かるという意味で、大丈夫だろうではなく、絶対に大丈夫なレベルに仕上げています。

裏蓋一体型のカーボンモノコックケースと6スクリュー構造で、ISO規格準拠の気密性を確保。

裏蓋一体型のカーボンモノコックケースと6スクリュー構造で、ISO規格準拠の気密性を確保。

気体、液体、薬品に強い3種類のOリングで、気密を高めたトリプルガスケット構造(特許出願中)。

気体、液体、薬品に強い3種類のOリングで、気密を高めたトリプルガスケット構造(特許出願中)。

GWF-A1000開発ストーリー

Select a location